Tsukasa Theater

脚本家/役者・近藤司のブログ

タイプキャスト/棲み分け

さて、もうすぐこっちに来て受けたオーディション総数が50に達する気がします。1年以内に100個受けるのが目標だったのでそれを考えると順調ですね。
オーディションの情報はバックステージという新聞もしくは様々なインターネットのサービスを使って得るのですが、そこには役名とどんな役か、というのが書いてあります。それをbreakdownと呼びます。(噛み砕いた、みたいなニュアンスですね)

例えば

ジョーン(20代前半)主役。人種問わず。誰にでも明るく接し、クラスの人気者。父親との間に確執があり感情的な一面も持つ。筋肉質でスポーツマンタイプ。

という具合に書いてあるわけです。それを見て可能性があるなーと自分が思ったオーディションに写真と自分の履歴書を送りつけ、それを見た監督やキャスティングディレクター(配役担当者)が「こいつに会ってみたい」と思って連絡をもらって初めてオーディションを受けられるわけですね。これをコールバック(call back)と呼びます。
しかしまだまだ白人中心社会のこの業界ではたとえ「人種問わず」と書かれていても主役のオーディションに行くとだいたい8割は白人です。そしてそういう所にひょっこり僕が行くと「なんだこのひょろっとしたアジア人は。プププ。」というリアクションを他の役者たちからもらうことが多いです。「少なくない」ではなくて「多い」です。それくらいアジア人俳優は(特に舞台の場合)少ないし、受けに来る白人の役者の多くからは「競争相手」とは見られていないことを感じます。

最近は人種差別の意識も高くなったのか、どうしても作品の意向で人種の特定が必要じゃない場合以外は「人種問わず」と書かれていることが多いですが、それでもbreakdownを読むと「これどう考えても白人を頭に浮かべてるよね」というものは分かります。じゃあ逆に「アジア人」という募集がどれくらいあるかというと、少ないです。僕が受けられるオーディション(年齢の幅などで)が20あったらそのうちの一つがアジア人だったりするくらいでしょうか。

僕が今、自分に「どれだけ恥をかくことになっても受けられるオーディションはなるべく受ける」というルールを課しているので(それもどうかと思いますが)、たとえ上のジョーンの役のような、アメリカでは僕の対極にあたるような役でも受けに行ってます。そして会場に入り他の役者たちから「え?」みたいな目で見られるか、もしくは無視されるという経験をしています。これは日本ではなかなかなかった環境なので自分が外国人でマイノリティで尊敬されていないんだということを日々痛感します。

しかしこれは白人たちは差別意識まるだしだぜーということではなくて、こっちでは基本的に階級や人種による棲み分けのようなものがすごく浸透しているということでもあります。NYはアメリカでは例外だと思いますがそれでも町を歩いていると同じ人種同士が一緒にいることが普通です。なので白人ばかりの「主役」のオーディション会場にアジア人の僕がひょっこり来ることに違和感を持ったり、もしくは僕というアジア人は関わる必要がない人間だと認識してしまうのだと思います。それは僕がいくら英語が話せても関係ないことのようです。

もちろん、見た目の違いってのは存在するし作品を作る上で重要なわけですから、なにも「もっと違う人種同士で積極的に交流しようぜー」と言っているわけではないですが。が。もう少し可能性を見いだしてくれてもいいんじゃないかなと思ったりもします。


とはいえ、僕だって自分と見た目の似ている人の方が(勘違いかもしれないけれど)文化を共有している気になって、話しかけ易いですし、そもそも「なぜ人と交流する必要があるのか」とか考えだすと良く分かりません。

とりあえず、恥を毎日かきながらもオーディションは受けています。

あ、それに主役のオーディションに行ってみたら「実はアジア人の会社員の役があるから君はそっちで出てほしいな」とかそういうこともあったりします。